副業でも創業融資は受けられる?不動産・民泊で審査を通すために必要なこと
「会社員を続けながら、週末だけ民泊を始めたい」
「中古の戸建てを購入して、賃貸物件として運用したい」
「本業の給料があるから、返済能力はむしろ高いはずだ」
副業で事業を始めようとする人の中には、このように考えて日本政策金融公庫の創業融資を検討する人がいます。
ところが、いざ融資の相談をしようとすると、急に不安になります。
「副業なのに、創業融資なんて受けられるのだろうか?」
結論からいうと、副業だからという理由だけで、創業融資を受けられないわけではありません。
日本政策金融公庫では、新たに事業を始める人や、事業開始後おおむね7年以内の人を対象とした「新規開業・スタートアップ支援資金」を用意しています。また、創業期の一定の対象者については、原則として無担保・無保証人で利用できる仕組みも案内されています。(日本フードコンソーシアム)
ただし、副業である以上、担当者からこう思われる可能性があります。
「本当に事業として続けるつもりなのだろうか」
ここを乗り越えられるかどうかが、副業で創業融資を受ける際の大きなポイントです。
副業でも創業融資を受けられる可能性はある
日本政策金融公庫は、民間の金融機関だけでは資金を調達しにくい小規模事業者や創業者を支援する政策金融機関です。
そのため、平日は会社員として勤務し、夜間や休日に事業を行う人であっても、融資を受けられる可能性はあります。実際に、日本政策金融公庫が公開している全国創業事例集には、副業から創業した事例も掲載されています。(創業融資ガイド |)
ただし、ここで勘違いしてはいけません。
「副業でも申し込める」と「副業なら簡単に借りられる」は、まったく別の話です。
会社員の給料が毎月入ることは、生活の安定という意味ではプラス材料になり得ます。
一方で、担当者が見ているのは給料だけではありません。
事業に使える時間はあるのか
本業と両立できるのか
本当に売上が立つのか
計画どおりに運営できるのか
趣味ではなく事業として取り組むのか
副業の場合、むしろ専業の創業者以上に、事業への本気度を説明する必要があります。
融資担当者が知りたいのは「副業ですか?」ではない
仮に会社員の田中さんが、空き家を利用した民泊を始めるため、500万円の融資を申し込んだとします。
面談で次のように話したら、どうでしょうか。
担当者
「なぜ民泊を始めようと思ったのですか?」
田中さん
「最近、外国人観光客が増えているからです」
担当者
「この地域には、年間どのくらい宿泊需要がありますか?」
田中さん
「たぶん、かなりあると思います」
担当者
「想定している客室稼働率は?」
田中さん
「人気が出れば、ほぼ毎日埋まると思います」
担当者
「清掃は誰が行いますか?」
田中さん
「会社が休みの日は、私がやります」
月曜日から金曜日まで会社で働いているのに、平日のチェックアウト後の清掃をどうするのか。
この時点で、担当者の頭の中には大きな疑問符が浮かんでいます。
融資担当者が知りたいのは、単に「副業かどうか」ではありません。
お金を貸した後、計画どおりに事業が動き、返済される可能性があるかどうかを確認したいのです。
副業で評価されるのは「知識・経験・計画」
副業で創業融資を受けるためには、主に次の3つが重要になります。
1.事業に関する知識がある
不動産賃貸業なら、物件価格だけを見ていてはいけません。
周辺の家賃相場、入居率、想定される修繕費、管理費、固定資産税、火災保険料などを把握しておく必要があります。
民泊の場合は、宿泊単価だけでなく、繁忙期と閑散期、清掃費、予約サイトの手数料、リネン交換費、光熱費、運営代行費なども確認しなければなりません。
「この物件は駅から近いので、たぶん人気が出ます」
これだけでは、事業の知識があるとは判断されにくいでしょう。
「近隣の類似物件10件を調査したところ、平均賃料は月8万5,000円でした」
「周辺の宿泊施設を調査し、平日は8,000円、週末は1万2,000円の料金設定を想定しています」
このように、根拠となる数字が必要です。
2.関連する経験がある
副業の場合、これまでの仕事や経歴と、始める事業とのつながりも重要です。
例えば、不動産会社に勤務している人が不動産賃貸業を始めるのであれば、物件選定や賃貸管理の経験を説明できます。
ホテルや旅行会社に勤務している人が民泊を始めるのであれば、接客、予約管理、外国人対応などの経験をアピールできます。
一方で、これまで不動産にも宿泊業にも関わったことがない人が、
「知人から民泊は儲かると聞きました」
と話しても、説得力はあまりありません。
未経験だから絶対に融資を受けられないわけではありませんが、その場合は事前の調査や資格取得、専門家との連携、運営代行会社との契約などで不足を補う必要があります。
3.実現可能な計画がある
副業の審査で特に見られやすいのが、時間の使い方です。
例えば、平日の午前9時から午後6時まで会社で働いている人が民泊を運営する場合、次のような点を説明する必要があります。
問い合わせには誰が対応するのか
チェックインは無人化するのか
清掃は誰に依頼するのか
鍵の受け渡しをどうするのか
苦情や設備故障に誰が対応するのか
本業の繁忙期でも運営を続けられるのか
「頑張ります」ではなく、自分が会社にいる時間にも事業が回る仕組みを作ることが重要です。
不動産の副業で創業融資を受けたい場合
副業の創業融資のサポート相談で多いのが、不動産に関する事業です。
例えば、次のようなケースがあります。
中古戸建てを購入して賃貸する
空き家をリフォームして貸し出す
アパートやマンションを取得して運営する
賃貸物件を借りて民泊として運営する
空き物件を宿泊施設へ転用する
ただし、不動産の場合は「事業」と「資産運用」の違いを明確にする必要があります。
単に、
「値上がりしそうな物件を買いたい」
「会社員の給料以外にも家賃収入が欲しい」
という説明だけでは、創業計画として弱くなってしまいます。
融資を申し込むなら、少なくとも次の内容を説明できるようにしておきましょう。
物件を選んだ根拠
なぜ、その地域、その物件なのでしょうか。
駅からの距離、人口動態、周辺の賃料相場、競合物件の入居状況、大学や工場などの賃貸需要を調べます。
「安かったから買う」ではなく、
「単身者向け賃貸の需要があり、同条件の物件が少ないため、月額7万円の賃料を見込める」
という説明が必要です。
空室が出た場合の計画
不動産賃貸業では、常に満室になるとは限りません。
退去後の原状回復費、入居者募集の広告費、仲介手数料、数か月分の空室期間を計画に入れておく必要があります。
年間12か月分の家賃をそのまま売上として計算していると、計画の甘さを指摘される可能性があります。
修繕費の見込み
築年数の古い物件では、給湯器、エアコン、屋根、外壁、水回りなどに修繕費が発生します。
購入直後は問題がなくても、数年後に大きな支出が発生することがあります。
物件価格だけでなく、購入後の維持費まで含めて資金計画を立てましょう。
民泊は「外国人が増えている」だけでは通らない
民泊は副業として人気がありますが、融資の計画を作るのは意外に難しい事業です。
住宅宿泊事業法に基づく民泊は、宿泊させる日数が年間180日を超えないものとされており、自治体の条例によって営業可能な期間がさらに制限される場合もあります。(国土交通省)
つまり、
365日 × 宿泊単価1万円 = 年間売上365万円
という計算は、住宅宿泊事業法に基づく民泊では成立しません。
また、民泊には複数の運営方式があります。
住宅宿泊事業法に基づく民泊
旅館業法に基づく簡易宿所
国家戦略特区における特区民泊
どの方式で営業するかによって、必要な許認可や営業日数、物件の要件が異なります。
さらに、日本政策金融公庫の生活衛生貸付では、旅館業法に基づく簡易宿所は対象に含まれる一方、住宅宿泊事業法による民泊と特区民泊は対象外と案内されています。これは「公庫のすべての融資が利用できない」という意味ではありませんが、どの融資制度を利用できるのか、事前確認が必要です。(日本フードコンソーシアム)
民泊の収支計画で忘れやすい費用
民泊の売上は、宿泊単価に宿泊日数を掛ければ計算できます。
しかし、利益はそれほど単純ではありません。
例えば、1泊1万2,000円で月に15日稼働した場合、売上は18万円です。
そこから次の費用が差し引かれます。
予約サイトの手数料
清掃費
リネンやタオルの交換費
水道光熱費
インターネット料金
消耗品費
管理代行費
家賃または借入返済額
火災保険料
設備の修繕費
売上18万円と聞くと悪くないように感じます。
しかし、清掃や管理を外部へ委託すると、手元に残る金額は思ったほど多くないことがあります。
特に副業の場合、自分で対応できる時間が限られるため、外注費を少なめに見積もるのは危険です。
副業の創業融資でよくある失敗パターン
「本業の給料から返済できます」
これは一見、安心できる説明に聞こえます。
しかし、創業融資は原則として事業資金です。
担当者が確認したいのは、給料から返済できるかだけではなく、事業そのものが利益を生み、返済できる計画になっているかです。
本業の収入は補助材料にはなりますが、赤字の事業計画を救う魔法のカードではありません。
「不動産なので最後は売却できます」
将来の売却価格は確定していません。
希望する価格で売却できる保証もありません。
売却益を前提とするのではなく、保有中の賃料収入で返済できる計画を作る必要があります。
「民泊は今、流行っています」
流行していることと、自分の物件に予約が入ることは別問題です。
地域、駅からの距離、宿泊料金、部屋の広さ、競合施設、観光需要などを具体的に調査しましょう。
「外国人が増えているから大丈夫」は、事業計画ではなく感想です。
「清掃は自分で行うので費用はゼロです」
自分で行う場合でも、洗剤、リネン、交通費、作業時間などが必要です。
さらに、本業の勤務中に急な清掃やトラブル対応が発生した場合、どうするのかを考えておく必要があります。
副業で創業融資を申し込む前に確認したいこと
副業で創業融資を検討する場合は、次の資料や情報を準備しておくとよいでしょう。
本業の就業規則や副業許可の状況
副業に使える曜日と時間
自己資金を貯めた経緯が分かる通帳
物件の販売資料や賃貸借契約書
リフォームや設備購入の見積書
周辺の家賃相場や宿泊料金の調査資料
許認可を取得できる見込みを示す資料
月別の売上・経費・返済計画
管理会社や清掃会社の見積書
本業と事業を両立する運営体制
勤務先の就業規則で副業が禁止されていたり、許可が必要だったりする場合もあります。計画どおりに事業を続けられるかという点にも関わるため、申し込み前に確認しておきましょう。(創業融資ガイド |)
まとめ|副業かどうかより「事業として成立しているか」が重要
副業でも、日本政策金融公庫の創業融資を受けられる可能性はあります。
しかし、副業であることを理由に審査が甘くなるわけではありません。
むしろ、
本業と両立できるのか
事業に必要な経験があるのか
自分が不在でも運営できるのか
売上や経費の根拠があるのか
事業の利益から返済できるのか
といった点を、具体的に説明する必要があります。
不動産や民泊は、物件を購入すれば自動的に利益が出る事業ではありません。
物件選定、集客、清掃、管理、修繕、許認可、空室対策など、想像以上に多くの仕事があります。
融資担当者を納得させるのは、壮大な夢ではありません。
「誰が、いつ、何をして、いくら売り上げ、いくら残るのか」
この地味な数字を、現実的に積み上げた事業計画です。
副業だから借りられないのではありません。
副業を、まだ「空いた時間にやる小遣い稼ぎ」としか説明できないから、融資が難しくなるのです。
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